2023年09月06日

沿ドニエストル「天然ガスのウクライナ迂回輸入ルートがある」(ねえよ) 

 こちらによると、沿ドニエストルは、ウクライナ領を迂回して天然ガスを受け入れる可能性がある。
 「沿ドニエストル共和国の日」におけるプレスコンファレンスにおいて、クラスノセリスキー大統領は「新しいルートは既に検討されている。沿ドニエストルはウクライナを迂回するルートで直接、ロシアの天然ガスを受け入れる」。大統領によると、ガスプロムとモルドヴァガス社との将来の関係が問題であるという。「天然ガスはモルドヴァも我々も必要とする。MGRES(沿ドニエストル領内の火力発電所)はガスでモルドヴァ用に発電している。相互に結び付いている」と述べた。
 この発言に対しこちらに論評が掲載されているので簡単に紹介。
 ロシアとアメリカの相互制裁により、ヤマル-ヨーロッパ、そしてノルドストリーム1、2が停止した。今日、ガスプロムのヨーロッパ向けルートは、トルコストリームとウクライナ領の2つである。ウクライナ領経由で天然ガスを受け取っているのは、沿ドニエストルを除くと、EUでは、スロヴァキア、オーストリア、ハンガリーの企業のみである。ウクライナ経由の現行の輸送契約は2024年12月31日までであり、ウクライナルートなしの場合は、トルコストリームが唯一のルートになる。
 チェバン・モルドヴァガス社長は、先のクラスノセリスキー大統領の発言について、トランスバルカン・ルートでのリバース輸送が念頭にあるのではないか、とコメントしている。これはまさに、モルドヴァガス社が2019年(ウクライナとロシアの輸送契約が延長するか否かでもめていたとき)に計画していたものである。しかし、沿ドニエストルによって、モルドヴァのパイプライン以外にどのようなルートがあるのだろうか。沿ドニエストルへのロシアガス供給は、モルドヴァガスのルートのみであり、必ずガス分岐基地オルロフカを経由するから、ウクライナのガス輸送システムも使用しなければならない。ウクライナ領を迂回して沿ドニエストルに供給する場合は、ヤッシ・ウンゲニ・キシナウ・ガスパイプラインを使うことになるが、冬季におけるモルドヴァの全消費を充たすだけの輸送力はない。
 「従って、ウクライナを迂回して沿ドニエストルに供給することはほとんど不可能である」とトフィラート・モルドヴァガス監査役委員会議長は言う。ウクライナ領経由の輸送契約の失効は、沿ドニエストルにとっての無償天然ガスが終わることを意味する。しかし、今のモルドヴァにとって、沿ドニエストルの電力に頼り、沿ドニエストル危機に備えがなく、好ましいことではない。
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2023年07月07日

OSCE、ドニエストル紛争に新提案

こちらによると、OSCE議院アンサンブル(PA)は沿ドニエストル和平に新提案を行った。
 6/30-7/4にかけてカナダのバンクーバーにおいてOSCE議院アンサンブルの年次会議が行われ、決議にはモルドヴァに関する項目も盛り込まれた。その中で、ドニエストル紛争は、OSCE地域の安全・安定に脅威を与えていると指摘した。
以下、決議の興味深い点をピックアップ
・ロシアの軍事侵攻により5+2は一時保留、1+1を推す
・ロシアに部隊、武器備蓄を引き上げ・破壊を求める
・平和維持として国際的なマンデイとを受けた文官ミッションの派遣


RESOLUTION ON
THE REPUBLIC OF MOLDOVA
1. Recalling the previous resolutions on the Republic of Moldova and the Transdniestrian
conflict settlement process adopted during earlier annual sessions of the OSCE PA,
2. Recognizing that the Republic of Moldova is one of the countries most affected by the
consequences of the unprovoked war of aggression waged by the Russian Federation
against Ukraine, which constitutes a gross violation of the norms and principles of
international law, including a severe breach of the OSCE’s commitments and the Charter
of the United Nations,
3. Commending the Republic of Moldova’s solidarity with Ukraine and its people amid the
Russian Federation’s illegal war there, including by welcoming hundreds of thousands
of Ukrainian citizens who have transited through or sought refuge in the Republic of
Moldova, despite the latter’s limited material resources and the ongoing security and
economic threats posed by the Russian Federation,
4. Appreciating the commitment of the Republic of Moldova to pursuing comprehensive,
far-reaching reforms, notably to strengthen the rule of law, combat corruption and build
strong and efficient institutions, and thanking the OSCE institutions for developing tailor-
made support in such challenging times,
5. Welcoming the granting, by the June 2022 Council of the European Union, of European
Union candidate status to the Republic of Moldova, which is a milestone for the future
of the country,
6. Convinced that continued democratic reforms supporting the rule of law, human rights
and fundamental freedoms, and the fight against corruption can contribute to achieving
this aim,
7. Recognizing that the conflict in the Transdniestrian region of the Republic of Moldova
continues to pose a serious threat to security and stability in the OSCE area, and
reaffirming OSCE participating States’ commitment to attaining a peaceful,
comprehensive and sustainable solution to this protracted conflict, with full respect for
the sovereignty, independence and territorial integrity of the Republic of Moldova within
its internationally recognized borders,
8. Emphasizing the importance of economic development and the positive aspects resulting
from the implementation of the free trade agreement between the European Union and
the Republic of Moldova, including the Transdniestrian region, that has been in effect
since 1 January 2016,
9. Underlining the importance of the positive example, in terms of socio-economic
development and cohesion, by the Autonomous Territorial Unit of Gagauzia,
The OSCE Parliamentary Assembly:
10. Emphasizes the importance of inter-parliamentary dialogue and parliamentary
contributions to addressing protracted conflicts in the OSCE region;
11. Underlines that the main goal of the Transdniestrian conflict settlement process is to
attain a comprehensive, peaceful and sustainable resolution based on the sovereignty and
territorial integrity of the Republic of Moldova within its internationally recognized
borders, with a special status for the Transdniestrian region while ensuring the viability
of the reintegrated State;
12. Fully supports the outstanding work done by the OSCE Mission to Moldova in
accordance with its mandate, especially in the current geopolitical context, with the
monitoring activities by the Mission in the Security Zone and beyond, in particular, being
of the utmost importance;
13. Notes that the 5+2 talks are on hold as a result of the Russian Federation’s war of
aggression against Ukraine and, in this context, appreciates the efforts of the OSCE
Mission to Moldova aimed at facilitating, in particular, the dialogue in the 1+1 format,
both at the level of chief negotiators and within the framework of sectoral working
groups, with the aim of solving emerging issues in the interests of people living on both
banks of the Dniester/Nistru River;
14. Urges the Russian Federation to resume the withdrawal of its military troops and
ammunition stockpiles from the territory of the Republic of Moldova, in accordance with
its constitutional provisions of neutrality and in line with the relevant 1999 OSCE
Istanbul Summit decisions, as well as UN General Assembly resolution 72/282;
15. Welcomes the readiness of the OSCE Mission to Moldova to contribute to ensuring
transparency of the removal and destruction of Russian ammunition, weapons and
military equipment stored in the Transdniestrian region of the Republic of Moldova;
16. Invites all relevant actors to initiate political discussions with the aim of transforming the
current peacekeeping operation in the Transdniestrian region into a multilateral civilian
mission under an appropriate international mandate that would reflect the real needs on
the ground.
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2023年06月17日

沿ドニエストル経済予測

 沿ドニエストル政府が2024年予算案の基礎となる経済予測を発表したので箇条書きで紹介。
・2024年度予測の前提条件 
 対外経済活動が現行通りに維持される。対外パートナーとの決済方法が維持される
 ガス供給が妨害されず、冶金工場が安定的に稼働、電力輸出が重要な役割を果たす
・2023年
 上記前提は2023年末までは劇的に変わらないことが予測される。2023年末の工業生産は3.5%成長。2022年とは異なり、電力、鉄鋼で成長が見込める。国内市場向け食品産業は微成長、東側の貿易パートナーへはアクセス困難であり、機械生産業、鉄加工業に否定的な影響を与える。
 好天候が予想されることから、農業部門は前年比18%成長、CPIは年8-10%水準に低下。小売りは10%増。
 対外貿易輸出入は1.5%増(輸出額+6%、エネルギー価格の低下により、輸入額は微減)
 平均月給与額は6%増
 2023年GDP成長率は+4.5%
・2024年
 同条件が続けば、工業生産のプラス成長が見込める。農業生産は2023年比で2.3%増
 対外貿易輸出入額は2023年比8.4%減、輸出額はマイナス0.7%、輸入額はマイナス10.9%
 GDP成長率は1.8%
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2023年末まで現在の状態(天然ガスがロシアから十分に供給される、鉄鋼と発電が阻害されない)が続くと予測しているのは理解できるが、2024年は果たして。
posted by 藤森信吉 at 20:27| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月02日

ゼレンシキー、沿ドニエストル侵攻の選択肢を示唆

 こちらによると、
ゼレンシキー・ウクライナ大統領は、ウクライナ軍の沿ドニエストル軍事侵攻は、モルドヴァ側の要請があった場合に可能である、と述べた。
 キシナウで開かれたヨーロッパ政治共同体サミットに参加したゼレンシキー大統領は、閉会の記者会見において、ウクライナが単独で沿ドニエストルに侵攻するとの噂を否定し「ウクライナはモルドヴァ政権側からの要請があった場合のみ実行に移し、助力する」と述べた。また大統領は、モルドヴァ側からの要請が過去にあったか問われ「要請はなかった」と答えた。また、大統領は、ウクライナは沿ドニエストルに領土要求しない、「(両岸は)モルドヴァと国家統合されねばならない」と強調した。
 ゼレンシキーは、サミットにおいて、ウクライナが戦争で勝利した後にモルドヴァは統合されることを確信している、とも述べていた。
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沿ドニエストルは、かつてウクライナ社会主義ソビエト共和国領であったので領土要求はできなくもないが、否定。
沿ドニエストルへの軍事侵攻は、2022年5月頃にモルドヴァ側に打診したが賛同されなかった、という説があったが、ゼレンシキーの今般の発言は、却ってそれを裏付けることになっている。2022年5月というと「沿ドニエストル側からの侵攻でウクライナを挟撃」と我々は踊っていたが、実際の情勢は「ウクライナ側から侵攻で沿ドニエストルを挟撃」に近かったようだ。
 沿ドニエストルは本当にガクブルだろう。今やロシアは頼りにならない、経済的には天然ガスの供給が怪しくなっている、ウクライナが軍事圧力を示唆。ナゴルノカラバフの次は沿ドニエストルなのか。
posted by 藤森信吉 at 14:41| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月21日

沿ドニエストルMMZ、モルドヴァ側に環境適合証の5年延長を要求

 こちらによると、沿ドニエストルの鉄鋼工場MMZは、モルドヴァ政府に対して、公式に5年間の環境適合証の効力を求めた。
 MMZは汚染物資の放出と廃棄物管理に関する適合証明の5年間効力を求めた。これに対し、モルドヴァの環境相は、数か月前にも延長の申請を受けているが、技術関連の文章が膨大で審査過程が非常に複雑だ、と述べた。MMZは緊急時の決定として1か月単位の一時的な許可を得ているが、前環境相が述べたように、MMZの適合証明は、沿ドニエストル側がMGRES(火力発電所)の電力輸出を促すための前提条件となっている。
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沿ドニエストルの工業と輸出において、鉄鋼と電力がそれぞれ7割くらいを占めている。環境証明はEUが世界中の鉄鋼所に課しているもので、これがないと、EUから屑鉄を輸入できない。一方で、記されているように、モルドヴァが沿ドニエストル産電力(圧倒的に安い)を購入するための人質ともなっているので、まあ5年でなく小出し延長でしょう。

posted by 藤森信吉 at 18:02| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月18日

2022年の沿ドニエストルのインフレ率は13.2%

 こちらによると(vpn通す必要あり)沿ドニエストルの2022年のインフレ率は13.2%だった。
 沿ドニエストル国家統計によると、3-6月がインフレのピークであり、後に沈静化した。食品の価格上昇が主たる要因で、21%上昇した。また、非耐久消費財は10%上昇、サービスは4.5%増だった。
 分析によると、昨年度、食品価格の変動が大きく、鶏卵は6月に減少、7-8月に上昇、9月に減少、10-11月に上昇、と変動を繰り返した。また、ガソリンも3-6月に上昇ピークが来た。LPG、洗剤、マッチも上昇した。他方で昨年末に世界経済はインフレの鎮火傾向にあり、これが沿ドニエストルにも影響を及ぼしている。12月のインフレ率は0.1%だった。
 モルドヴァでは年インフレ率が30%超となっており、エネルギー料金の上昇が主因である。2021年の沿ドニエストルのインフレ率は7.4%、モルドヴァのインフレ率は14%だった。
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 沿ドニエストルは食料をはじめとして輸入依存なので、世界経済の影響はかなり受ける。エネルギーにしても、天然ガスはロシアからタダでもらっているが、原油製品は市場価格で購入している。
posted by 藤森信吉 at 21:49| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月06日

モルドヴァの電力危機は去ったのか

 こちらにドニエストル両岸の電力問題が論じられているので簡単に紹介。
*沿ドニエストルの国営通信社の記事です。ベラルーシのVPNを通すとアクセスできるようです。

 ガス問題の妥結と沿ドニエストル電力のモルドヴァ市場への供給は、両岸にとって大きなニュースである。モルドヴァ国家地区発電所(Молдавская ГРЭС)は通常の稼働状態に戻り、11月のブラックアウトの再来はなくなった。
 12/3のモルドヴァEnergocom社との電力契約によれは、1Mwh当たり73ドルで10月より17%高いが、11月にモルドヴァが購入していたルーマニアやヨーロッパの電力(180ユーロ、ピーク時は450ユーロ)よりは遥かに安い。
 モルドヴァへの電力輸出は沿ドニエストルへのガス供給問題の解決とパラレルである。12月、沿ドニエストルはガスプロムから全量(570万m3/日)受け取れることになった。これにより、電力輸出だけでなく、域内において、全日お湯供給、トローリーバスの通常運行が可能となった。また、エネルギーを消費するモルドヴァ冶金工場、リブニツッツァのセメント工場が操業を再開した。
 ガス問題を振り返ってみよう。10月、モルドヴァと沿ドニエストル向けのガス供給が570万m3に縮小された。ガスプロムは、ナフトガス社が全量の輸送を拒否しているため、と説明した。真の理由は別である。すなわち、モルドヴァガス社が支払い日程を遅らせたこと、そして外部監査の未実施である。10月21日、沿ドニエストルはガス不足により経済非常事態宣言を行い、暖房シーズン入りを遅らせた。11月はさらに悪化する恐れがあったが、モルドヴァ・ガスプロム契約内でガス390万m3/日を確保できた。しかしながら、モルドヴァ側の背信行為により、40%減の230万m3しか供給されなかった。沿ドニエストルは当初よりガス抜き取り、あるいは、一部がウクライナ領内で留め置かれていることを指摘してきた。このことは11月22日にガスプロム社が確認しており、その後、ナフトガス社は、モルドヴァ側が行ったバーチャル・リバースの過程で、ウクライナ領内にガスが留まっている、と公表した。
 沿ドニエストルのガス不足は、11月の電力契約未締結につながり、モルドヴァはルーマニアとEUからの電力供給に迫られたが、価格の問題が出てきた。直近だけでもモルドヴァの電力料金は2倍になり、長期的にモルドヴァの消費者が耐えられないことが明白になってきた。そして、ウクライナでの戦闘行為により、ルーマニア電力だけでく安定を担保できないことが分かった。結果、両岸では11月にブロックアウトが二度も起きた。仮にモルドヴァ国家地区発電所がフル稼働しなければ、三度目のブロックアウトが生じたであろう。
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 沿ドニエストル側の解釈。モルドヴァガスとガスプロムの契約で沿ドニエストルはどのように規定されているのか、契約書の一部がネット上に出ているので読んでみたが、良くわからない。モルドヴァガスへ供給量は契約内で決まっているが、仮にガスプロムが減らした場合、沿ドニエストル枠を最優先で確保しなければならないのか(沿ドニエストル側の主張)、あるいは両岸とも同率で減らすのか、モルドヴァ枠を最優先するのか、よく分からない。今回の12月の一件は、ガスプロムと沿ドニエストルの言い分が貫徹。
posted by 藤森信吉 at 11:48| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月29日

モルドヴァ・沿ドニエストル実務者会議

 こちらにモルドヴァ・沿ドニエストル間実務者協議の模様が記されているので紹介(沿ドニエストル寄りのニュースサイトです、念のため)。
 28日、ティラスポリのOSCE事務所において、仲介者の主催およびオブザーバー立会いの下、経済問題に関する会議が開かれた。政治問題の代表をつとめるセレブラャン(再統合問題担当モルドヴァ副首相)およびイグナチョフ(沿ドニエストル外相)も参加した。議題は
1.エネルギー問題
 モルドヴァ側は沿ドニエストル側の安い電力に関心があるが、沿ドニエストル側は、モルドヴァ側にガスプロムとの関係改善を提案。火力発電所(MGRES)の燃料不足は、モルドヴァ・ガスプロム交渉によるものである、と主張。
2.薬品および食品輸入問題
 沿ドニエストル側は、モルドヴァ側の輸入妨害、特にモルドヴァ通関を経由するロシア製そば粉や薬品について提起。近日中に保健問題に関する実務者会議の開催で合意。
3.金融問題
 沿ドニエストル側は、沿ドニエストル銀行のブロック問題についても提起。
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モルドヴァ側は2と3で譲歩することで、電力輸出を取り付けたいところだが、「燃料のガスがない」というのが沿ドニエストル側の主張。モルドヴァがウクライナ領に備蓄しているガスを沿ドニエストルに回す、ということもあり得るかも。
posted by 藤森信吉 at 17:05| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月25日

沿ドニエストル外相のロングインタビュー記事

 最近、モスクワメディアにやたら露出している沿ドニエストル外相が今度はイズヴェスチアに登場。
以下、興味深い点を箇条書き。
・サンドゥ政権は「1992年7月21日の停戦合意はロシアからの脅迫で調印した」と述べ離脱しようとしている。停戦合意はロシアの平和維持軍の根拠となっている。
・モルドヴァは中立国だが、フィクションである。2006年来、NATOセンターが3つ機能しており、個別パートナーシップ行動計画が開始され、段階的に影響圏に入っている。
・外国軍の駐留を可能とする法が採択済であり、欧州国境沿岸警備機関(Frontex)はすでにモルドヴァ領にいる。
・モルドヴァは第二ルーマニア国みたいなものだ。30年間、ルーマニアは100万以上の国籍をモルドヴァに与え、モルドヴァのエリートのほとんどがルーマニア国籍だ。立法、行政、司法は親ルーマニア勢力が抑えている。
・モルドヴァではモルドヴァ史でなくルーマニア史を学び、モルドヴァ語は存在せずルーマニア語である。モルドヴァ語は沿ドニエストルでのみ維持されている。
・モルドヴァ・ルーマニア合同はベッサラビアがルーマニア統治下にあった1918-40への回帰である。
・ロシアが沿ドニエストルを国家承認する・編入するという問題であるが、沿ドニエストルは地政学的な過程の複雑さを大変よく理解している。世界は変革期にある。この件については、コメントしない。
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 よく読んだら、沿ドニエストルが30年くらい前から繰り返していたロジックの焼き直しでした。「モルドヴァ・ルーマニア再統合の根拠となるベッサラビアとかモロトフ・リッベントロップ条約に沿ドニエストル地域は含まれない」と言いたいはず。
あとイグナチョフ外相、 私も一度、外務次官時代にお会いしたことがある(当時の外相はシェフチューク大統領の彼女)。たぶん松里教授は四回くらいインタビューしているはず。
posted by 藤森信吉 at 22:05| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月23日

沿ドニエストル住民=モルドヴァ国民

 こちらによると、沿ドニエストル住民のほとんどはモルドヴァ国籍パスポートの保有者である。
 モルドヴァ公共サービス局の統計によると、沿ドニエストル住民35.5万人の内、32万人以上がモルドヴァのパスポートを保有している。また、沿ドニエストルの2312社がモルドヴァに登記、沿ドニエストルの28.8万人がモルドヴァ身分証明カードを保有、過去5年内に2万6400人の沿ドニエストルのドライバーが、運転免許証の交換をモルドヴァに申請している。
 モルドヴァ政府は「これらの数字が示すところは、モルドヴァ東部の住民・企業の大多数は対外経済活動のためにモルドヴァの公式書類を保有している」と述べている。  
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沿ドニエストルは未承認国家なので、当然、二重国籍は許可されている。モルドヴァ国籍が32万、ロシア国籍が22万と言われているので、三重国籍もざらにいるのだろう。クラスノセリスキー大統領は、ロシア国籍・ウクライナ国籍を持っている。沿ドニエストル人にとって、モルドヴァ国籍はEU圏に出稼ぎに行けるので人気。モルドヴァ当局も政策的にがんがん配っている。
posted by 藤森信吉 at 12:33| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする