2023年01月19日

生き残りモードに入ったウクライナ鉄鋼業界

 こちら(英文)にウクライナの鉄鉱工業界の状況が記されているので紹介。
 2022年2月のロシア侵攻以降、ウクライナの鉱業・鉄鋼業界は「生き残りモード」で稼働している。ウクライナ冶金連盟(Укрметалургпром)総裁のカレンコフ氏によると、鉱業の稼働率は20%、鉄鋼は15%である。先日、連盟は2022年度の生産統計を公表したが、それによると、粗鋼生産量は前年比70.7%減、圧延鋼は同72%減であった。かつてウクライナの生産量の4割を産出していたマリウポリの2つの鉄鋼所の損壊が業界最大の喪失であった。マリウポリの破壊により、板用鋼の輸出の全て、熱間圧延鋼板の輸出の3割を失った。ウクライナ側が統治している領内の企業も人員不足、電力不足、そして黒海港封鎖により否定的な影響を受けている。黒海の封鎖により、トラックや鉄道、あるいはルーマニア、ブルガリア、ポーランドの港からの輸出を余儀なくされている。ロジスティック費用は4-5倍に高騰した。それゆえ、対中国輸出はもはや採算が成り立たなくなっている。かつて、鉄鉱石の50%、鉄鋼の8割は輸出にまわされていた。その比率は今も変わらないが、輸出先が変わった。EU向けが1/3から6割に上昇した。黒海の封鎖がなければ、輸出量を増やし、稼働率を30-45%に引き上げられる。
 将来的には、EU標準に遵守し続けるのが重要である。目下、西側世界では、緊縮政策で建設業は低調となっており、これがウクライナ鉄鋼業界の悩みの一つとなっている。しかしEUでは需要が今後、1500-2000万トン/年に上昇すると見られている。この需要をウクライナの鉄鋼が満たすことが重要である。ウクライナのインフラの復興が輸入鋼で行われている兆候が見られる。フランスのMatiere社が、鉄橋建設に鉄鋼を供給するが、これはウクライナで生産可能なものだ。黒海港の開放が早ければ早いほど、ウクライナはアジアや中東、北アフリカに輸出できるが、現状ではこの可能性はなく、ヨーロッパ経済の進展に直接依存している。
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 鉄道の復興はフランス政府の融資のようです。
https://www.railtech.com/infrastructure/2022/12/14/france-to-supply-rail-tracks-to-ukraine/

posted by 藤森信吉 at 14:17| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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