2021年01月20日

天然ガス料金値下げ問題

 こちらに住民向け天然ガス料金値下げの論評が掲載されているので簡単に紹介。
 政府は住民向け天然ガス料金の値下げを決定した。この決定はガス市場改革からの転換やIMFとの関係悪化をもたらすのだろうか。 
政権にとって2021年は困難とともにはじまった。コロナ・ウィルス関連だけでなく、公共料金問題が浮上した。1月1日からガス料金が15-20%上昇したのだ。いくつかの地域では反対運動が起こり、大規模な不払いリスクが迫っている。この問題に、大統領が個人的に介入し、住民向けガス価格の上限6.99フリブナ/m3が設定された。
 何故ガス価格が上昇しているのか。2020年8月以降、価格規制が撤廃されガスの自由市場が機能、各人が好みの企業からガスを購入する権利を得た。しかしナフトガス社が大口市場を独占し、一方で小売市場はフィルタシらが支配する地域ガス供給企業が独占している。競争がない状態での市場自由化はリスクを伴う。さらに厳冬による暖房需要の増加、コロナ禍による収入減で住民は価格上昇に対応することができなくなっている。また住民の多くは市場に対する知識が不十分である。ガス輸送料も別計算で支払わなければならないが、ウクライナ国家エネルギー公共料金規制委員会が定めるガス輸送料は2021年度に平均40%値上げされると見込まれていた。
 値上げ反対運動に地方議員や祖国党、さらには野党プラットフォーム-生活党も加わり、ガス料金引き下げを要求し始めた。政府は「2月から隔離期間終了の3月31日までガス料金を6.99フリブナ/m3以下にする」ことを決定した。6.99フリブナは1月の市場価格の最安値である。また、ガス輸送料を1.79フリブナ/m3とする値下げも予定されている。
 このような決定は短期的には危機脱出を可能とするが、将来的には新たな問題を引き起こす。第一にガス料金の上限を設定することは競争を無力化する。第二にIMFとの合意に反することになる。第三に市場における信頼を損なうことになる。3月以降、このような規制価格が終わる保証はどこにもないからだ。
 一時的な市場価格から規制価格への移行は、ウクライナ政府と西側ドナーとの関係を損ないかねない。ガス市場改革はIMFのウクライナに対する改革のキーである。IMFは現時点ではコメントを避けており、現時点ではIMF使節団の仕事にどのような影響があるか不明だ。
 ウクライナの政治家も市民も公共料金の市場価格原則で生きていく準備ができていない。次の暖房シーズンでは価格は200ドル/m3を超えるかもしれない。ここでは政府が安い価格で夏季に貯蔵したガスを住民の消費に充てるメカニズムをIMFと妥協できるかにかかっている。でなければ、政府のいつもの介入は不可避となろう。
posted by 藤森信吉 at 16:48| Comment(0) | エネルギー問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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