2024年07月24日

人口減が続くモルドヴァ

2024年に国勢調査が行われたモルドヴァだが、こちらに人口減についての議論が掲載されていたので紹介。

・モルドヴァの国勢調査の速報値ではモルドヴァ(沿ドニエストル除く)の住民数は240万人となっている。移民政策の専門家であるマクヒン博士によると、モルドヴァの最大の問題は移民である。人口減は「死亡数-出生数」と「出国」から生じる。前者は年8-9000人だが、後者は年々増えており、今や年6.3万人に達している。移民は、将来の幸福と家族の将来への疑問から生じている。教育、ハウジング、そして医療だ。
 出生率向上の政策は僅かな効果しか挙げていない。例えば多産家族への支援だが、資金額が足りない。国連によると、モルドヴァの出生率は1.73である。この数字は40年前のヨーロッパ諸国と同じである。したがって目下約1.4のヨーロッパ諸国のような急減な人口減となることはない、と国連は見ている。

・ディアスポラの帰還
 諸データを総合すると、在外モルドヴァ人は80万〜100万人に達する。2021年の外務省の数字によると、ロシアに35.42万人(ロシア側の数字では19万人)、アメリカに6万人、イギリスに4.2万人、スペイン3.5万人、ギリシャ2-3万人、ポルトガル2.5-2.7万人、チェコ2-2.5万人、アイルランド2万人、カナダ1.9万人、イスラエル1.8万人とになっている。最新データはないが、ロシアにいるモルドヴァ・ディアスポラの数はウクライナ侵攻後に急減したと見られている。
 モルドヴァでは、好条件でディアスポラの帰還を促進する政策が検討されてきた。例えば、3年以上在外にいた者が帰還した場合、輸送車両の輸入諸経費を免除するといったものだ。しかし、諸外国、ポーランド、アイルランドの例を見る限り、この帰還政策の効果は疑問である。

・ウクライナ難民
ロシアのウクライナ侵攻後、モルドヴァには8-10万人のウクライナ国籍人が逗留している。シニカルだが、モルドヴァの人口問題解決の機会となるかもしれない。文化的に近く、言語(ロシア語)障壁も高くないが、モルドヴァ社会への統合度合いは低い。
 モルドヴァ社会は、他宗教、多人種を統合する準備ができていない。外国人、外資を誘致するプログラムはあるが、その多くは中央アジア諸国、旧ソ連諸国である。また東南アジア、カンボジア、ネパール等、首都キシナウの生活水準より低い地域からである。調査によれば、モルドウァ人は、アフリカ人やムスリムと結婚、友人とになることを望んでいない。 最も望ましいのは、モルドヴァに留学した大学生がそのままとどまることである。しかしながら、彼らの卒業後に、経済的な展望が描ける状況を作り出す必要がある。
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公式統計がないが、沿ドニエストルは右岸(モルドヴァ)以上に人口減が続いていると見られている。ソ連崩壊時に60万人弱いたのが、今や30万人。モルドヴァの対沿ドニエストル政策に「自然死」というのがあるが、今の真綿で首を絞めるような経済封鎖と人口減で、もう一世代もすれば、沿ドニエストルの人口は危機的な水準になって社会維持が困難になる。もちろん、その頃には右岸の人口も減っていて今以上にヨロヨロなので、老衰寸前に再婚しても・・・という気も。
posted by 藤森信吉 at 11:11| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする