こちらによると、沿ドニエストルは、ウクライナ領を迂回して天然ガスを受け入れる可能性がある。
「沿ドニエストル共和国の日」におけるプレスコンファレンスにおいて、クラスノセリスキー大統領は「新しいルートは既に検討されている。沿ドニエストルはウクライナを迂回するルートで直接、ロシアの天然ガスを受け入れる」。大統領によると、ガスプロムとモルドヴァガス社との将来の関係が問題であるという。「天然ガスはモルドヴァも我々も必要とする。MGRES(沿ドニエストル領内の火力発電所)はガスでモルドヴァ用に発電している。相互に結び付いている」と述べた。
この発言に対しこちらに論評が掲載されているので簡単に紹介。
ロシアとアメリカの相互制裁により、ヤマル-ヨーロッパ、そしてノルドストリーム1、2が停止した。今日、ガスプロムのヨーロッパ向けルートは、トルコストリームとウクライナ領の2つである。ウクライナ領経由で天然ガスを受け取っているのは、沿ドニエストルを除くと、EUでは、スロヴァキア、オーストリア、ハンガリーの企業のみである。ウクライナ経由の現行の輸送契約は2024年12月31日までであり、ウクライナルートなしの場合は、トルコストリームが唯一のルートになる。
チェバン・モルドヴァガス社長は、先のクラスノセリスキー大統領の発言について、トランスバルカン・ルートでのリバース輸送が念頭にあるのではないか、とコメントしている。これはまさに、モルドヴァガス社が2019年(ウクライナとロシアの輸送契約が延長するか否かでもめていたとき)に計画していたものである。しかし、沿ドニエストルによって、モルドヴァのパイプライン以外にどのようなルートがあるのだろうか。沿ドニエストルへのロシアガス供給は、モルドヴァガスのルートのみであり、必ずガス分岐基地オルロフカを経由するから、ウクライナのガス輸送システムも使用しなければならない。ウクライナ領を迂回して沿ドニエストルに供給する場合は、ヤッシ・ウンゲニ・キシナウ・ガスパイプラインを使うことになるが、冬季におけるモルドヴァの全消費を充たすだけの輸送力はない。
「従って、ウクライナを迂回して沿ドニエストルに供給することはほとんど不可能である」とトフィラート・モルドヴァガス監査役委員会議長は言う。ウクライナ領経由の輸送契約の失効は、沿ドニエストルにとっての無償天然ガスが終わることを意味する。しかし、今のモルドヴァにとって、沿ドニエストルの電力に頼り、沿ドニエストル危機に備えがなく、好ましいことではない。