2022年07月30日

モルドヴァ、8月の輸入電力契約を締結

 こちらによると、モルドヴァは8月の電力を確保したことを宣言した。
 スピヌゥ・インフラ地域発展相によると、8月、モルトヴァは必要量の20%をウクルヒドロエネルホ(水力発電)から、10%を同じくウクライナのエネルホアトム社から、それぞれ77ドル/MWhで購入する契約に調印した。残り70%は沿ドニエストルのМГРЭСから59.9ドル/MWhで購入する。これにより、8月の平均輸入価格は65.03ドル/MWhとなる。住民向け電力料金に変更はない。
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二か月前の調印通りの条件。問題は9月以降、ロシアがモルドヴァ向け天然ガス供給を削減、沿ドニエストルからの電力輸入量も落ちると、モルドヴァは政治的・経済的に耐えられなくなるのでは。
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2022年07月26日

ハリコフ合意(2010)の主導者は国家転覆罪

 こちらによると、ハリコフ合意(2010)調印に関与した当時の閣僚が国家転覆罪に問われている。
 検察庁の捜査によると、2010年4月の元大統領および元首相と共謀したグループ員は、政府関連機関や議会に対し十分な案の説明をせずにウクライナの主権、領土保全、防衛力、経済安全保障を損なった。その結果、ミンスク合意は議会で批准され、ロシア黒海艦隊のクリミア駐留が25年間延長され、のちのクリミア占領を導いた。検察庁は、当時の法相と外相の捜査令状をとっている。
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後付け酷くない? 2009年ガス契約に関与したティモシェンコがヤヌコヴィッチ政権時代に有罪判決受けたのと同じ。
 1997年の黒海艦隊分割協定にかかわった政府関係者(ラザレンコはアメリカの刑務所にいるけど)とか、2006年のガス契約にかかわった者(ユーシチェンコ)とかも追及されるべき。
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2022年07月25日

沿ドニエストル外相のロングインタビュー記事

 最近、モスクワメディアにやたら露出している沿ドニエストル外相が今度はイズヴェスチアに登場。
以下、興味深い点を箇条書き。
・サンドゥ政権は「1992年7月21日の停戦合意はロシアからの脅迫で調印した」と述べ離脱しようとしている。停戦合意はロシアの平和維持軍の根拠となっている。
・モルドヴァは中立国だが、フィクションである。2006年来、NATOセンターが3つ機能しており、個別パートナーシップ行動計画が開始され、段階的に影響圏に入っている。
・外国軍の駐留を可能とする法が採択済であり、欧州国境沿岸警備機関(Frontex)はすでにモルドヴァ領にいる。
・モルドヴァは第二ルーマニア国みたいなものだ。30年間、ルーマニアは100万以上の国籍をモルドヴァに与え、モルドヴァのエリートのほとんどがルーマニア国籍だ。立法、行政、司法は親ルーマニア勢力が抑えている。
・モルドヴァではモルドヴァ史でなくルーマニア史を学び、モルドヴァ語は存在せずルーマニア語である。モルドヴァ語は沿ドニエストルでのみ維持されている。
・モルドヴァ・ルーマニア合同はベッサラビアがルーマニア統治下にあった1918-40への回帰である。
・ロシアが沿ドニエストルを国家承認する・編入するという問題であるが、沿ドニエストルは地政学的な過程の複雑さを大変よく理解している。世界は変革期にある。この件については、コメントしない。
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 よく読んだら、沿ドニエストルが30年くらい前から繰り返していたロジックの焼き直しでした。「モルドヴァ・ルーマニア再統合の根拠となるベッサラビアとかモロトフ・リッベントロップ条約に沿ドニエストル地域は含まれない」と言いたいはず。
あとイグナチョフ外相、 私も一度、外務次官時代にお会いしたことがある(当時の外相はシェフチューク大統領の彼女)。たぶん松里教授は四回くらいインタビューしているはず。
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2022年07月24日

ウクライナ国立銀行、フリブナ下落を容認

 こちらによると、フリブナの為替レートが36.6/ドルに急落した。
21日、ウクライナ国立銀行は開戦時に導入された外貨規制を改定、いくつかの項目は強化もしくは緩和された。国立銀行の公式レートは、29.25/ドルから25%減の36.5686/ドルへ急伸した。開戦後、ウクライナ経済と世界経済は大きく変わり、もはや当初のレートは現実を反映していない。と国立銀行総裁は説明する。公式レートの変更により、外貨がウクライナに流入し、また、公式レートと実勢レートの乖離がもたらす投機を減らすことができる。
 公式レートの25%減により、輸入品の価格は急騰する。ウクライナは燃料輸入国であるため、ガソリン、ディーゼル、LPガス価格が上昇し、国内製品価格とロジスティックコストを引き上げることになる。インフレは6月に前年同月比で21.5%を記録、為替の下落は、インフレに拍車をかけることになる。国立銀行は2-3ポイントのインフレ高進を予測している。2022年のインフレ率は30%超、23年は20.7%、2024年は9.4%と予測されている。
 一方で為替レートの下落は輸出業、政府、国立銀行にとってメリットが大きい。輸出業者は29.25フリブナ/ドルの時代に比べ高いレートで外貨を売ることができるし、輸出競争力、特にドル安を続けているEU市場における競争力、が強まる。輸出業が発展することで歳入増が見込める。ウクライナ議会は7月1日から、輸入関税を導入することを決定している。国際的な援助金がフリブナ換算で増えることにもなる。政府のユーロ債繰り延べ交渉成功により、安いフリブナは国庫負担とはならない。
 とはいえ、国立銀行は「一度限りの為替レート改定」と称しているが、戦時中で不確定要素が多く、将来的な為替レートの予測は不可能である。
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2022年07月23日

沿ドニエストル住民=モルドヴァ国民

 こちらによると、沿ドニエストル住民のほとんどはモルドヴァ国籍パスポートの保有者である。
 モルドヴァ公共サービス局の統計によると、沿ドニエストル住民35.5万人の内、32万人以上がモルドヴァのパスポートを保有している。また、沿ドニエストルの2312社がモルドヴァに登記、沿ドニエストルの28.8万人がモルドヴァ身分証明カードを保有、過去5年内に2万6400人の沿ドニエストルのドライバーが、運転免許証の交換をモルドヴァに申請している。
 モルドヴァ政府は「これらの数字が示すところは、モルドヴァ東部の住民・企業の大多数は対外経済活動のためにモルドヴァの公式書類を保有している」と述べている。  
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沿ドニエストルは未承認国家なので、当然、二重国籍は許可されている。モルドヴァ国籍が32万、ロシア国籍が22万と言われているので、三重国籍もざらにいるのだろう。クラスノセリスキー大統領は、ロシア国籍・ウクライナ国籍を持っている。沿ドニエストル人にとって、モルドヴァ国籍はEU圏に出稼ぎに行けるので人気。モルドヴァ当局も政策的にがんがん配っている。
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2022年07月22日

モルドヴァ人、ルーマニア国軍に従軍か

 こちらによると、ルーマニア国籍を持つモルドヴァ人の動員を可能とするルーマニア法案の審議が始まった。
 ルーマニアの法案によると、20-35歳で国外に住むルーマニア国籍人は、戦争状態の宣言もしくは動員があった場合、ルーマニアで応召せねばならない。これは、モルドヴァのルーマニア国籍人にも関連することである。法案は7月初めに提出されている。
 ルーマニア国外のルーマニア国籍人は15日以内に徴兵ステーションに出頭しなければならない。拒否した場合は自由はく奪7年、出頭した際に召集状の受け取り拒否もしくは出頭が遅れた場合は455〜91000ユーロの罰金が科せられる。
 モルドヴァには100万人のルーマニア国籍人が住んでいる。
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モルドヴァは軍事的中立を謳っているが、NATO軍が総動員になると、事実上、NATO側につくことに。沿ドニエストルにもルーマニア国籍人がいるはずなので、こうなると何がなんだか。因みにモルドヴァは法的に二重国籍が可能。サンドゥ大統領はモルドヴァ/ルーマニアの二重国籍。
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2022年07月17日

モルドヴァ、輸出絶好調

 こちらによると、2022年5月のモルドヴァの貿易輸出額は過去最高を記録した。
 5月の貿易輸出額は4.16億ドルで、直近12か月間の貿易輸出額は過去最高の39億ドルに達した。これはコロナの影響があった前年同期比で13億ドル増(50%増)であった。
 輸出額増の第一の要素としては、2021年に前例がないほどに上昇した農産品輸出が寄与していることが挙げられる。
 第二に、左岸の農産品がモルドヴァ製品の輸出としてカウントされている。ウクライナが境界線を固めたことで、この現象が生じている。
 第三に、ウクライナ製品の再輸出である。開戦後、ウクライナ製品のかなりの部分がモルドヴァ経由で輸出された。いくらかは、モルドヴァをトランジットしただけでなく、輸入された後に再輸出された。
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第二と第三は本当かね? 沿ドニエストル製品の輸出入はこれまで、モルドヴァ統計には算入されていなかったし、第三の「再輸出」はWTO原則にひっかかると思うのだが。
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2022年07月13日

モルドヴァ「貧乏なのでロシア・ガスに頼ってます」

 こちらによると、モルドヴァ大統領与党は「ルーマニア経由のガス輸入は高すぎる」と述べた。
 モルドヴァの大統領与党「行動と連帯」党のガブルク議員は、ヤッシ・キシナウ・ガスパイプラインが何故、ロシアが提示する高いガスに代わるルートとして今日利用されないのか、という質問を受け「ヤッシ・キシナウ・ガスパイプラインは機能するが、目下の価格は非常に高い。しかし、エネルギー分野における代替確保に向け注力していく」と述べた。また、「行動と連帯党は改革を進めていくが早急に成果は出ない、例えば法律の改革は7-8年はかかる。エネルギー部門は非常に脆弱であるが、この一年、多くの改革が行われてきた」と指摘した。
パイプライン
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 与党に対する批判・支持率低下の自覚はあるものの、現実的な選択肢はあまりない、ということを吐露。
ヤッシ・キシナウ・ガスパイプラインはルーマニア領経由で天然ガスをモルドヴァに輸入するルートで2021年完工。供給源はトルコストリームでもギリシャのLNG基地からでもいいのだが、どっちにしても、現行のガスプロム契約よりも高い。
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2022年07月12日

モルドヴァ、インフレ率30%突破

こちらによると、モルドヴァの過去12ヶ月のインフレ率は31.83%に達した。
 国家統計局によると、食料品の価格上昇率は34.3%、公共料金が40.7%だった。6月のインフレ率は2.21%で、砂糖(6.5%)、パン(3.5%)、果物(2.9%)、燃料費(9.3%)、ガス料金(22.7%)、電力(13.1%)の価格上昇が顕著であった。他方で、キュウリ(マイナス31.3%)、トマト(マイナス20.8%)、きゃべつ(マイナス19.9%)は大幅安となった。
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 モルドヴァはロシア、ベラルーシ、ウクライナからの輸入がロジスティックを含めて大きいので、ウクライナ戦争の影響が極めて大きい。世論で見ると、ウクライナと顕著な違いが出てきており、政権支持率、EU加盟支持率は低迷、社会党(プーチン贔屓)の支持率は上がっており、そして当初から対ロ感情は悪くない。これを当事者意識の欠如とか言ってはいけない。モルドヴァには未だに7万人のウクライナ避難民がいるから、バリバリ当事者意識はあるはず。給料の数割が公共料金支払いに消える世界は我々には想像できない。 
 
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2022年07月11日

ウクライナ「ロシア・ガスの輸送を続ける限り、パイプラインは攻撃されない」

「ウクライナ・ガス輸送システムオペレーター(ОГТСУ)」社は、「ウクライナ領でガス輸送が続けられる限り、ロシアはガス輸送インフラを破壊することはない」と述べた。
 セルヘイ・マコホンОГТСУ社長はテレビ番組において「仮に輸送がなければ、我々はウクライナ消費者に対する輸送力を低下させることになる。我々には自らのガス市場、ガス生産があり、戦時中でもガス輸送力を維持することが重要だ。ウクライナ領経由の輸送は目下、継続されており、製油所や鉄道輸送に対するようなロシアのインフラ攻撃はない」と述べた。
 また、目下、ガスプロムは契約が規定する予約量の40%以下しか利用していない、と指摘した。
 ウクライナのガス輸送インフラをロシア占領者の攻撃から守るため、ОГТСУ社はドイツ経済省やよびドイツ連邦ネットワーク庁に対しノルド1関連の法案の再考を提案している。ノルド1の停止・制限がかけられた場合、ロシアは完全なガス禁輸をするまでは、ウクライナのガス輸送インフラを必要とすることになる。

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2022年07月10日

ウクライナ人のいないウクライナ

こちらに、ウクライナの人口危機問題が論じられているので簡単に紹介。
 2022年初のウクライナ人口は4120万人であった。しかし今や3600万人で70年前と同じ数字である。4ヶ月で国民500万人が去った。
正確な数字は常に問題となっている。国境警備局の数字と国連難民高等弁務官事務所の数字が利用されるが、両者の数字は一致しない。国連の数字によると、2月24日から6月29日の間、純出国者数は520万人(ヨーロッパ、ロシア含む)である。すなわち、住民の13%が国外に出たことになる。また、国連データによると、2月24日から6月27日の間にウクライナ国民5000人が死亡した。半年の間に5万人が生まれたが、前年同期間中は133000人が誕生している。
 国民の一部が帰還しないリスクもある。Work.uaが、国外ウクライナ避難民に調査を行ったところ、25%の回答者が近い将来の帰還を計画、61%が戦争終結後に帰還、14%が帰還を計画していない、と回答した。専門家は、外的要因が帰還計画に影響を与える、と指摘する。愛国心の高まりで国外に留まることを言いづらいこともある。また、国外避難民は、既に現地に適応しており、成人は就業し、子供は学校に通っている。適応すればするほど、帰還は難しくなる。
 国外避難の傾向は今後も続くだろう。目下、成人男性は国外に出れない。避難民の80%は女性、40%は子供であった。戦勝後、彼らの夫や父親が家族を追って国外に出るだろう。内何割かは、家族のためにより良い生活を求める。避難民の約90%は労働可能年齢にある。55%が40歳以下であり、ウクライナ経済は労働力、需要、将来の起業家を喪失していることになる。
 しかしながら、目下、納税額は足りている。失業していない者は十分な数がいる。国外避難民が出たため、失業者は減り、戦闘中の地域では社会保障費が支払われていない。そのため、国家予算の社会保障費負担は低く、比較的安全な都市は避難民で溢れていることはなく、失業率も高くない。
 しかし長期的には悪い。子供の国外避難により、ウクライナ労働の10-15年分を失ったことになる。将来の経済発展にとり大きな損失となる。
一時的な出国は問題てはなく、帰還しないことが問題なのだ。国は、帰還を奨励し、受け入れ体制を整えるべきだ。まずは戦争を終わらせ安全を確保し、そして家と仕事を保証する。現時点では、求職数は多いが賃金は低い。が、次第に労働市場は売りて市場へ変わるだろう。ここでも、戦争がどれだけ短期の内に終わるかが重要である。長引けば、海外で適応してしまい、帰還が遠のく。


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2022年07月09日

ウクライナのインフレ問題

こちらにウクライナのインフレ亢進問題が論じられているので簡単に紹介。
 6月のインフレ率は2016年初以来の年率20%超を記録した。5月の数字とくらべても年インフレ率は3.5ポイント上昇している。2016年2月が32.7%であったが、当時と異なり、今日はインフレ率が亢進し続けており、さらに数字が高まる可能性がある。
・インフレを牽引するものは世界経済と同様に輸送(月11.2%、年42%)と食品(月3.2%、年27.7%)である。
・輸送では、バス輸送が高騰、食品では卵(月17.2%)、砂糖(月10.9%)が高い。
・他の多くの商品の価格上昇率はインフレ率より低い。
・デフレは期待できない。戦争による生産縮小、ビジネスマインドの低迷、いくつかの州の占領による野菜不足等が理由である。
・例年、夏場は季節商品、すなわち牛乳、果物、野菜等が安くなりデフレとなっていたが、これはもはや期待できない。
・現在の公式インフレ率は実際のインフレ率より低く出る。例えば燃料の多くは燃料チケットで売られており、公式価格より高いが、インフレ率の計算には参入されていない。
・今後、25%-30%の間にインフレ率が上がるのではないか、と予想されている。
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2022年07月08日

アフメトフ、大損害

 こちらによると、ロシア侵攻によりアフメトフ所有SCM傘下の70余りの企業が損害を受けている。
 ヨーロッパ人権裁判所における代理人を務めている法律事務所Covington&Burling LLPは、SCM(システム・キャピタル・マネージメント)傘下およびアフメトフ所有の約70の企業が、破壊・全壊・占拠され、損害が進行している、と述べた。 
 ヨーロッパ人権裁判所へ訴えにおいて、SCMは侵攻が継続中で終わっていない、として具体的な損害額は挙げていない。しかし、アフメトフ傘下のDTEK(エネルギー部門)は数十億ドルの損害を蒙っている、とDTEKのティムチェンコがforbes誌とのインタビュー内で明らかにしている。
また、SCMの農業部門HarvEastはドネツィク州の97000haとキィウおよびジトミル州の26000haが戦争行動で損なわれている。公開された情報によると、HarvEas社のマリウポリの穀物貯蔵庫とメットインベスト社の鉄鋼をロシアが掌握している。
 6月末、アフメトフは欧州人権裁判所に対し、アゾフスターリ破壊とイリッチ名称製鉄所の損壊に対する補償をロシアに求める裁判を起こした。アフメトフは両製鉄所の損害額を170-200億ドルと試算している。
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 アフメトフ帝国は、経済危機のみならず、オレンジ革命、マイダン以降のドンバス占領、と政治的危機をも悉く乗り切って資産を増やしてきたが、今度ばかりは厳しいか。多角化しているから、どこかの部門がある程度カバーするとは思うが。アフメトフは言うまでもなくウクライナ政治・経済の最重要人物だが、本人がメディアに出てこないし積極的に発信もしないため、重要な局面でどんな役割を果たしたのかはっきりしない。一番の謎はクレムリンとの関係。たぶん全部、墓まで持っていくだろう。
posted by 藤森信吉 at 19:25| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ルーマニア、モルドヴァとウクライナにガス供給の用意

 こちらによるとルーマニア首相は、自領土経由でモルドヴァ、ウクライナに天然ガスを供給する用意がある、と述べた。
 ブルガリア・ギリシャ天然ガス相互接続パイプラインの開通式に参列したルーマニア首相は「基本的にこの接続パイプラインは、ブルガリアとルーマニアへのガス供給を確保するものであるが、東方のパートナー国、ウクライナとモルドヴァへのガス供給も確保することができる」と述べた。また首相は、両国のエネルギー相が、中長期的な共同プロジェクトに関するメモランダム調印が準備されていることにも言及した。

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 年30億m3の輸送力とのこと。
inflation.png

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2022年07月06日

外国からの支援と戦時国債に頼るウクライナ

 こちらによると、ウクライナの国家財政に最も寄与したのは外国の援助金だった。
 ジェレズナャーク議員(ホロス党)によると
・2月24日-7月5日までに国際パートナーによる国家財政への支援(援助および信用供与)は3225億フリブナで、直近二週間で1018億フリブナ積み上げられた。
・次いで国家財政に寄与しているのは、税収、関税収入および国営企業の配当金で3200億フリブナ
・第三位がウクライナ国立銀行の戦時公債購入で2440億フリブナ、およびウクライナ国立銀行の利益190億フリブナ
・次いで、商業銀行および個人が購入する国債 1109億フリブナ
・現時点では、国際社会の信用および援助金は歳入の32%のみをカバー
・7月5日の戦時公債に対する需要は過去最低に落ち込み、1億2800万フリブナのみを確保。ウクライナ軍の維持に毎月1300億フリブナが必要なので、0.1%をカバーするのみ
・6月期におけるウクライナ国家財政の赤字幅は5月期から20%アップの1349億フリブナに拡大。
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 兵器の話ばかり注目されているけど、国家財政の方がやばいような・・・ 戦時公債の入札不調はシンプルに利率が低いせいかと。公定歩合上げちゃったから、債券も利率上げないと誰も買ってくれません。
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2022年07月05日

モルドヴァ、ウクライナ人の政治難民申請激増

 こちらによると、開戦以降、モルドヴァに政治難民を申請したウクライナ人は7000人を超えた。
 7月5日時点で、開戦以降にモルドヴァ移民難民局に政治難民を申請したウクライナ国民は7000人を超えている。例年であれば、年100件余りの難民申請が、開戦以降に8000人超えとなっている。目下、4013人が審査登録されており、うち3263人がウクライナ人である。外国籍人は、モルドヴァ国境もしくはモルドヴァ領内で政治難民の資格を、国境通過ポイントもしくは警察署内の移民難民問題部局で申請できる。また、開戦以降、永住権の付与も30%増となっている。開戦以降、720人の外国籍人がモルドヴァ永住権を受領、内612人が簡素化プロレスで受領した。
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 現在、モルドヴァに滞在する難民が7万人と言われているので1/10が難民申請。
posted by 藤森信吉 at 21:28| Comment(0) | モルドヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月03日

2022年上半期貿易

こちらによると、上半期のウクライナ貿易輸出額は前年同期比マイナス23.7%だった。
・2022年上半期の貿易輸出額は228億ドル(前年同期比マイナス23.7%)
・2022年第二四半期の貿易輸出額は87.82億ドル(第一四半期からマイナス37.4%、前年同期比マイナス45.8%)
・Q2の貿易輸出量は1660万トンでたQ1比マイナス55.6%、港からの輸出量はマイナス86.5%。ここ数ヶ月で輸出量は安定、良化の兆しがある。
・6月の輸出額トップ10は、肉、とうもろこし、ひまわり種子、鉱石、鉄(半完成品)、ケーブル、鶏肉、パイプ、鋳鉄、大豆
・Q2の輸出先はEUが78%
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 マリウポリが死んだので、鉄鋼が輸出を牽引する時代は遂に終わりました。
posted by 藤森信吉 at 17:39| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月02日

ガスプロム、ウクライナ領経由の輸送量を激減

こちらによると、6月のガスプロムのウクライナ領パイプライン利用量は12.5億m3であった。
 ウクライナのガスパイプライン管理企業「ウクライナ・ガス輸送システムオペレーター(ОГТСУ )は、ウクライナのガス輸送システム経由の輸送量は1991年以来、過去最低の12.5億m3であったことを明らかにした。2022年5月比でも37%減、前年同期比で半減となっており、ヨーロッパにおけるガス価格を操作するロシアのガス脅迫は明らかである、としている。6月の輸送量は契約による予約枠(32.9億m3)の38%にすぎない。
 ノルド1輸送量の制限も合わさって、ロシアはEUガス市場の価格を高騰させている。
「ウクライナ・ガス輸送システムオペレーター(ОГТСУ )は、ソフラノフカ・ガス分岐基地(ГИС)経由のガス輸送については、一時的占領地域にあるノヴォプスコフ・加圧基地の制御ができず、また、占領者の契約外抜き取りがあるため、不可抗力であることを宣言している。
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 2019年12月に結ばれた輸送契約で最低輸送量(ship or pay)規定があるはずだが、抵触しているのではないか。ロシア的には違約金払ってでも得られるものがあるのか、あるいは違約金を踏み倒すのか。
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2022年07月01日

モルドヴァ、7月と8月の電力確保

 こちらによると、7月のモルドヴァの平均電力購入価格は65.03ドル/MWhとなる。
 スピヌゥ・インフラ地域発展相が明らかにしたところによると、7月と8月にモルドヴァは電力の70%をモルドヴァ国家地区発電所(МолдГРЭС、沿ドニエストル)から、30%をウクライナ(から購入する。前者は59.9ドル/MWh、後者は77ドルとなり、平均価格は65.03ドルとなる。
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 一か月単位だった契約が2か月契約と長くなった。情勢が安定してきたということか。しかし沿ドニエストル経済を支えるためにモルドヴァを抱き込んで作ったスキームが、今やモルドヴァ経済を支えるスキームに。このスキームがある限り、ロシアのモルドヴァに対するエネルギー外交は事実上、不可能。



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