2024年07月24日

人口減が続くモルドヴァ

2024年に国勢調査が行われたモルドヴァだが、こちらに人口減についての議論が掲載されていたので紹介。

・モルドヴァの国勢調査の速報値ではモルドヴァ(沿ドニエストル除く)の住民数は240万人となっている。移民政策の専門家であるマクヒン博士によると、モルドヴァの最大の問題は移民である。人口減は「死亡数-出生数」と「出国」から生じる。前者は年8-9000人だが、後者は年々増えており、今や年6.3万人に達している。移民は、将来の幸福と家族の将来への疑問から生じている。教育、ハウジング、そして医療だ。
 出生率向上の政策は僅かな効果しか挙げていない。例えば多産家族への支援だが、資金額が足りない。国連によると、モルドヴァの出生率は1.73である。この数字は40年前のヨーロッパ諸国と同じである。したがって目下約1.4のヨーロッパ諸国のような急減な人口減となることはない、と国連は見ている。

・ディアスポラの帰還
 諸データを総合すると、在外モルドヴァ人は80万〜100万人に達する。2021年の外務省の数字によると、ロシアに35.42万人(ロシア側の数字では19万人)、アメリカに6万人、イギリスに4.2万人、スペイン3.5万人、ギリシャ2-3万人、ポルトガル2.5-2.7万人、チェコ2-2.5万人、アイルランド2万人、カナダ1.9万人、イスラエル1.8万人とになっている。最新データはないが、ロシアにいるモルドヴァ・ディアスポラの数はウクライナ侵攻後に急減したと見られている。
 モルドヴァでは、好条件でディアスポラの帰還を促進する政策が検討されてきた。例えば、3年以上在外にいた者が帰還した場合、輸送車両の輸入諸経費を免除するといったものだ。しかし、諸外国、ポーランド、アイルランドの例を見る限り、この帰還政策の効果は疑問である。

・ウクライナ難民
ロシアのウクライナ侵攻後、モルドヴァには8-10万人のウクライナ国籍人が逗留している。シニカルだが、モルドヴァの人口問題解決の機会となるかもしれない。文化的に近く、言語(ロシア語)障壁も高くないが、モルドヴァ社会への統合度合いは低い。
 モルドヴァ社会は、他宗教、多人種を統合する準備ができていない。外国人、外資を誘致するプログラムはあるが、その多くは中央アジア諸国、旧ソ連諸国である。また東南アジア、カンボジア、ネパール等、首都キシナウの生活水準より低い地域からである。調査によれば、モルドウァ人は、アフリカ人やムスリムと結婚、友人とになることを望んでいない。 最も望ましいのは、モルドヴァに留学した大学生がそのままとどまることである。しかしながら、彼らの卒業後に、経済的な展望が描ける状況を作り出す必要がある。
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公式統計がないが、沿ドニエストルは右岸(モルドヴァ)以上に人口減が続いていると見られている。ソ連崩壊時に60万人弱いたのが、今や30万人。モルドヴァの対沿ドニエストル政策に「自然死」というのがあるが、今の真綿で首を絞めるような経済封鎖と人口減で、もう一世代もすれば、沿ドニエストルの人口は危機的な水準になって社会維持が困難になる。もちろん、その頃には右岸の人口も減っていて今以上にヨロヨロなので、老衰寸前に再婚しても・・・という気も。
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2024年06月26日

ウクライナの2004Q1の実質GDP成長率は前期比1.2%

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 ウクライナ国家統計局(Державна служба статистики України)によると2024年第一四半期の実質GDPは前四半期比で1.1%増、前年第一四半期比で6.5%増となった。
 2024年度のGDP成長率については、5月にウクライナ国立銀行が電力部門の喪失を理由に3.6%増から3%増へ引き下げたほか、6月に世銀が3.2%増の予想を出している。また、5月には同じく経済省も電力不足を理由に、3.7%増へ鈍化するとの数字を出している。
posted by 藤森信吉 at 21:04| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月25日

電力不足がウクライナ経済に与える影響

 こちらに目下の電力不足が経済に如何なる影響を与えるか論じられているので紹介。
 頻繁な停電は経済全体だけでなく、末端消費者の消費行動にまで影響を与える。
・インフレ、為替レートの下落
 ディーゼル発電機は発電コストが高く、中小企業は自腹で購入する必要があるため、製品価格に転嫁され、インフレの原因となる。また、発電機は輸入品であるため、輸入代金用に外貨需要が高まり、フリブナの為替レートが下落する可能性がある。
 コンクリ建材を例にとってみよう。予期せぬ停電より生産過程がストップすると半完成品が途中で硬化しはじめて製品はダメになる。しかし従業員への給料は支払われる。生産コストは上がるが、生産性は落ちる。こうなると企業の生存も怪しくなる。
・ディーゼル発電機の発電コストは市場の電力価格の2-3倍、輸入電力の1.5倍である。ディーゼル燃料係が必要なるし、安定した電力が必要とされる業態によっては蓄電池への投資も必要となる。電力不足は電気冷蔵庫を用いる業界(ロジスティック、レストラン、スーパー)により強力な発電機の導入を迫る。
・そもそも発電機は、5-10年間の長期的な電力不足を補うために設計されていない。小規模発電所の建設は、すぐに実現するものではなく、ガス発電も、ガスインフラへの攻撃にされさている。そしてウクライナのガス生産施設は前線の近くに位置している。電力不足は早急に解決できるものではないが、国内ビジネスは新しい現実下で生き残こらねばならず、消費者の財布から支払われることになる。もちろん、新しい効率的なエネルギーインフラを早急に建設することが、ウクライナ人が長期的に生存することを可能とすることは言うまでもない。
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2024年06月24日

輸出がけん引するウクライナ経済成長、電力不足で暗雲

 ウクライナ経済相は、2024年5月のGDP成長率(前年同月比)を3.7%(±1%)と発表した。
 2024年1-5月期のGDP成長率は前年同期比4.3%(±1%)となる。2024年1月3.5%、2月2.9%、3月4.6%、4月4.3%から鈍化した理由について、インフラ攻撃激化と電力不足によるものと説明されている。また、ロジスティック、移民による労働市場の逼迫もネガティブな要因として挙げられている。
 GDP成長の理由は、海上回廊の安定した稼働により輸出産業の生産が回復したこと、軍事生産への投資増、建築業界の需要増によるものである。また、冶金産業は開戦以来、最高の生産量を叩き出している。ひまわり油の生産も伸びた。
 一方でウクライナ最大の発電企業、DTEK社によると、2024-24冬季シーズンの電力不足は超絶暖冬でない限り不可避であり、
・電力輸入の拡大
・損壊した熱電供給システム(ТЭЦ)および水力発電の復旧
・新世代発電システムの建設
が検討されている。
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2023年10月05日

モルドヴァ政府、右岸の脱ガスプロム化を表明

 こちらによるとモルドヴァはガスプロムからの購入を行わない予定である。
 パルリコフ・モルドヴァ・エネルギー相は「右岸モルドヴァはガスプロムからの購入を行わない」と述べた。パルリコフ大臣によると、ヨーロッパの供給者から、ガスプロムより有利な価格で購入することに成功したためである。一方で、モルドヴァはガスプロムのガスで沿ドニエストルが発電する電力を輸入しているが、本件について変更があるかは述べなかった。
 これに対し、ペスコフ・ロシア大統領報道官は「ガスプロムとモルドヴァ間のガス契約は継続しており、またモルドヴァはガス債務を抱えており、額の確定で係争中である。スポット市場の変動は大きく、スポット市場は、パイプライン経由よりも今日、安価かもしれないが、将来、逆転する可能性もある。長期的な展望が必要だ」と述べた。
 また、こちらによると、10月からモルドヴァはトルコ企業経由でガス輸入を開始する。
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大臣は「モルドヴァ」でなく「モルドヴァ政権が支配する領域」と述べているので、沿ドニエストルについては、従来通りにガスプロムからガス供給を受けてね、安い電気は買うよ、ガスプロムへの支払いは知らん、という立場なのだろう。ガスプロム・モルドヴァガスの契約書を読む限り、沿ドニエストル分の支払いはモルドヴァガスに課せられるように思えるのだが・・・・

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2023年09月06日

沿ドニエストル「天然ガスのウクライナ迂回輸入ルートがある」(ねえよ) 

 こちらによると、沿ドニエストルは、ウクライナ領を迂回して天然ガスを受け入れる可能性がある。
 「沿ドニエストル共和国の日」におけるプレスコンファレンスにおいて、クラスノセリスキー大統領は「新しいルートは既に検討されている。沿ドニエストルはウクライナを迂回するルートで直接、ロシアの天然ガスを受け入れる」。大統領によると、ガスプロムとモルドヴァガス社との将来の関係が問題であるという。「天然ガスはモルドヴァも我々も必要とする。MGRES(沿ドニエストル領内の火力発電所)はガスでモルドヴァ用に発電している。相互に結び付いている」と述べた。
 この発言に対しこちらに論評が掲載されているので簡単に紹介。
 ロシアとアメリカの相互制裁により、ヤマル-ヨーロッパ、そしてノルドストリーム1、2が停止した。今日、ガスプロムのヨーロッパ向けルートは、トルコストリームとウクライナ領の2つである。ウクライナ領経由で天然ガスを受け取っているのは、沿ドニエストルを除くと、EUでは、スロヴァキア、オーストリア、ハンガリーの企業のみである。ウクライナ経由の現行の輸送契約は2024年12月31日までであり、ウクライナルートなしの場合は、トルコストリームが唯一のルートになる。
 チェバン・モルドヴァガス社長は、先のクラスノセリスキー大統領の発言について、トランスバルカン・ルートでのリバース輸送が念頭にあるのではないか、とコメントしている。これはまさに、モルドヴァガス社が2019年(ウクライナとロシアの輸送契約が延長するか否かでもめていたとき)に計画していたものである。しかし、沿ドニエストルによって、モルドヴァのパイプライン以外にどのようなルートがあるのだろうか。沿ドニエストルへのロシアガス供給は、モルドヴァガスのルートのみであり、必ずガス分岐基地オルロフカを経由するから、ウクライナのガス輸送システムも使用しなければならない。ウクライナ領を迂回して沿ドニエストルに供給する場合は、ヤッシ・ウンゲニ・キシナウ・ガスパイプラインを使うことになるが、冬季におけるモルドヴァの全消費を充たすだけの輸送力はない。
 「従って、ウクライナを迂回して沿ドニエストルに供給することはほとんど不可能である」とトフィラート・モルドヴァガス監査役委員会議長は言う。ウクライナ領経由の輸送契約の失効は、沿ドニエストルにとっての無償天然ガスが終わることを意味する。しかし、今のモルドヴァにとって、沿ドニエストルの電力に頼り、沿ドニエストル危機に備えがなく、好ましいことではない。
posted by 藤森信吉 at 10:38| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月14日

2000年以降のモルドヴァ世論のEU加盟熱

 こちらに、モルドヴァ世論のEU加盟支持率の長期トレンドが論じられているので簡単に紹介。
 モルドヴァ世論の過半はEU加盟に賛成しているが、15年前はもっと多かった。ウクライナ戦争にも関わらず、何故、ユーラシア関税同盟の支持があるのだろうか。
・2000年代
BOMのデータによると、モルドヴァにおるヨーロッパ統合は2000年代(2000-2010)に支持を集めた。2007年5月にピークを迎え、2009年以降に低下が強まった。2000年代の高い人気は政治状況と関連している。2001年にヴォローニン率いるモドヴァ共産党に政権が移った。ヴォローニンはロシアへの接近、ロシア、ベラルーシ同盟への加盟すら示唆したが、欧州統合路線に舵を切った。2005年の議会選挙での共産党の勝利により、さらに親欧州路線となった。投票日の二週間前には、EUとの連合協定が調印されている。
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 2000年代はしかしながら、ロシアとの緊密な関係を展望する者も多かった。2002年には40.7%が欧州路線に賛成する一方で、39.8%がCIS諸国への接近を支持した。
・2010年代
 2007年に共産党が地方選挙で退位し、2/3の地区では野党に代表が移った。首都でも自由党のキルトアケが市長になり、欧州統合路線に賛成、ロシアとの協力拡大にノーを突き付けた。共産党は路線を親ロシアに変更した。2009年に共産党は政権を失い、欧州統合連合が政権を担った。しかしなから欧州統合への支持率は下がり続け、2015年には賛成39.5%、反対41.8%となった。欧州統合人気の下落は当時の親欧州政権に対する信頼度の低さを反映している。2014年以降の選挙は自由とは言い難く、特に2014年選挙は民主党プラハトニュークによって操作された。2015-16年に同氏は議会を乗っ取り、人工的な多数派を形成した。2015-16年のEUの対モルドヴァ財政支援の凍結を以てしても、世論のEU支持率は回復しなかった。また、政権に対する低信頼だけでなく、欧州統合支持層が移民で出国したことも影響している。在外投票は強い親欧州の傾向を示している。
・EU対関税同盟
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2014年、社会党が議席を拡大(しかし「多数派」は構成できなかった)2010年代に、活発に関税同盟(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、クルグススタン、アルメニア)加盟路線を推しはじめた。議会選挙直後の2014年11月には、世論調査における関税同盟の支持率は44.1%に達し、2015年には50%に(EU加盟支持率は32.1%)届き、その後、18-30%間に下落している。興味深いことに、ロシアのウクライナ侵攻後、関税同盟への支持率は微増傾向にある。ウクライナ戦争はモルドヴァ社会を統合するのでなく、溝を深めている。これにはロシアのプロパガンダが作用しているとみる向きがある。一方で、2021年には、ロシアをモルドヴァの主たるパートナーとなみす層が減少していることも言及すべきだろう。2011年にはこの数字は62%であったが、2021年には32.5%に落ちている。
・2020年代
 2022年にモルドヴァがEUの加盟候補国となった後、EU加盟支持率は55-60%に切り上がってきた。この傾向は、現与党の改革への不満によるものとみられる。汚職対策等でEUが課す課題でより効果が見られれば、もっと加盟支持率は高くなるであろう。またEU加盟支持率は、与党支持率よりも高いことも重要だ。政府の節制にも関わらず、モルドヴァの人々はヨーロッパ路線を氏支持している。特に、エネルギー危機の際のEUの財政援助により、EU支持率が下がらなかったことが指摘できる。


 
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2023年07月07日

OSCE、ドニエストル紛争に新提案

こちらによると、OSCE議院アンサンブル(PA)は沿ドニエストル和平に新提案を行った。
 6/30-7/4にかけてカナダのバンクーバーにおいてOSCE議院アンサンブルの年次会議が行われ、決議にはモルドヴァに関する項目も盛り込まれた。その中で、ドニエストル紛争は、OSCE地域の安全・安定に脅威を与えていると指摘した。
以下、決議の興味深い点をピックアップ
・ロシアの軍事侵攻により5+2は一時保留、1+1を推す
・ロシアに部隊、武器備蓄を引き上げ・破壊を求める
・平和維持として国際的なマンデイとを受けた文官ミッションの派遣


RESOLUTION ON
THE REPUBLIC OF MOLDOVA
1. Recalling the previous resolutions on the Republic of Moldova and the Transdniestrian
conflict settlement process adopted during earlier annual sessions of the OSCE PA,
2. Recognizing that the Republic of Moldova is one of the countries most affected by the
consequences of the unprovoked war of aggression waged by the Russian Federation
against Ukraine, which constitutes a gross violation of the norms and principles of
international law, including a severe breach of the OSCE’s commitments and the Charter
of the United Nations,
3. Commending the Republic of Moldova’s solidarity with Ukraine and its people amid the
Russian Federation’s illegal war there, including by welcoming hundreds of thousands
of Ukrainian citizens who have transited through or sought refuge in the Republic of
Moldova, despite the latter’s limited material resources and the ongoing security and
economic threats posed by the Russian Federation,
4. Appreciating the commitment of the Republic of Moldova to pursuing comprehensive,
far-reaching reforms, notably to strengthen the rule of law, combat corruption and build
strong and efficient institutions, and thanking the OSCE institutions for developing tailor-
made support in such challenging times,
5. Welcoming the granting, by the June 2022 Council of the European Union, of European
Union candidate status to the Republic of Moldova, which is a milestone for the future
of the country,
6. Convinced that continued democratic reforms supporting the rule of law, human rights
and fundamental freedoms, and the fight against corruption can contribute to achieving
this aim,
7. Recognizing that the conflict in the Transdniestrian region of the Republic of Moldova
continues to pose a serious threat to security and stability in the OSCE area, and
reaffirming OSCE participating States’ commitment to attaining a peaceful,
comprehensive and sustainable solution to this protracted conflict, with full respect for
the sovereignty, independence and territorial integrity of the Republic of Moldova within
its internationally recognized borders,
8. Emphasizing the importance of economic development and the positive aspects resulting
from the implementation of the free trade agreement between the European Union and
the Republic of Moldova, including the Transdniestrian region, that has been in effect
since 1 January 2016,
9. Underlining the importance of the positive example, in terms of socio-economic
development and cohesion, by the Autonomous Territorial Unit of Gagauzia,
The OSCE Parliamentary Assembly:
10. Emphasizes the importance of inter-parliamentary dialogue and parliamentary
contributions to addressing protracted conflicts in the OSCE region;
11. Underlines that the main goal of the Transdniestrian conflict settlement process is to
attain a comprehensive, peaceful and sustainable resolution based on the sovereignty and
territorial integrity of the Republic of Moldova within its internationally recognized
borders, with a special status for the Transdniestrian region while ensuring the viability
of the reintegrated State;
12. Fully supports the outstanding work done by the OSCE Mission to Moldova in
accordance with its mandate, especially in the current geopolitical context, with the
monitoring activities by the Mission in the Security Zone and beyond, in particular, being
of the utmost importance;
13. Notes that the 5+2 talks are on hold as a result of the Russian Federation’s war of
aggression against Ukraine and, in this context, appreciates the efforts of the OSCE
Mission to Moldova aimed at facilitating, in particular, the dialogue in the 1+1 format,
both at the level of chief negotiators and within the framework of sectoral working
groups, with the aim of solving emerging issues in the interests of people living on both
banks of the Dniester/Nistru River;
14. Urges the Russian Federation to resume the withdrawal of its military troops and
ammunition stockpiles from the territory of the Republic of Moldova, in accordance with
its constitutional provisions of neutrality and in line with the relevant 1999 OSCE
Istanbul Summit decisions, as well as UN General Assembly resolution 72/282;
15. Welcomes the readiness of the OSCE Mission to Moldova to contribute to ensuring
transparency of the removal and destruction of Russian ammunition, weapons and
military equipment stored in the Transdniestrian region of the Republic of Moldova;
16. Invites all relevant actors to initiate political discussions with the aim of transforming the
current peacekeeping operation in the Transdniestrian region into a multilateral civilian
mission under an appropriate international mandate that would reflect the real needs on
the ground.
posted by 藤森信吉 at 12:24| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月03日

ウクライナの人口は2900万人

 こちらにウクライナの人口問題が論じられているので紹介。
 ウクライナ未来研究所が公表したデータによると、2023年5月時点のウクライナの住民は2900万人、内民間従業者は600-700万人(公務員除く、公務員込みで900万人)で残りの2200-2300万人を彼らが養う構造にある。移民の実態が掴めないため、ウクライナの人口は2800-3400万人と幅がある。人口動態の基本データは国勢調査であるが、ウクライナの最後の調査は2001年で、2001年12月5日時点で4845万7千人であった。その後、国勢調査は5回も延期され、今日に至っている。2030年1月1日の予測では、2400-3200万と幅がある。
 2020年12月、ウクライナ政府は2019年12月1日時点の人口は3729万人と発表した。自然増減の速度を考慮すると、今日の人口は、移民を抜きにすると3630万人と計算できる。これに移民を算入すると、未来研究所の2900万人は理解可能な数字となる。
 2021年の国家統計は労働人口を1500万人としていた。未来研究所の900万人はどう算出したのか不明だが、失業者の定義次第だろうか。移出入の数字もはっきりしない。国連UNCHRによれば、ウクライナからの難民は6月6日時点で628万人であった。内、ヨーロッパ滞在が593万人となっている。難民なのか一時的保護下にあるのか、という問題を考慮すると、難民数は495万人と修正される。また、国連は北米に10万人以上の難民がいるとしているが、ロシアにもウクライナからの難民が130万人おり、内10.36万人が亡命申請を出している。また、ベラルーシには2.77万人(内2800人が亡命申請)となっている。
 よって、難民率は、国ごとに異なり、戦争終結後には46-80%が帰還すると予測されている。また、ウクライナに来ているボランティアや出稼ぎ労働者がウクライナ国民になることも考慮されていない。2900万人、という数字は戦略的な予測というよりは、トレンドを表すものと考えてよい。
posted by 藤森信吉 at 14:08| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月17日

沿ドニエストル経済予測

 沿ドニエストル政府が2024年予算案の基礎となる経済予測を発表したので箇条書きで紹介。
・2024年度予測の前提条件 
 対外経済活動が現行通りに維持される。対外パートナーとの決済方法が維持される
 ガス供給が妨害されず、冶金工場が安定的に稼働、電力輸出が重要な役割を果たす
・2023年
 上記前提は2023年末までは劇的に変わらないことが予測される。2023年末の工業生産は3.5%成長。2022年とは異なり、電力、鉄鋼で成長が見込める。国内市場向け食品産業は微成長、東側の貿易パートナーへはアクセス困難であり、機械生産業、鉄加工業に否定的な影響を与える。
 好天候が予想されることから、農業部門は前年比18%成長、CPIは年8-10%水準に低下。小売りは10%増。
 対外貿易輸出入は1.5%増(輸出額+6%、エネルギー価格の低下により、輸入額は微減)
 平均月給与額は6%増
 2023年GDP成長率は+4.5%
・2024年
 同条件が続けば、工業生産のプラス成長が見込める。農業生産は2023年比で2.3%増
 対外貿易輸出入額は2023年比8.4%減、輸出額はマイナス0.7%、輸入額はマイナス10.9%
 GDP成長率は1.8%
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2023年末まで現在の状態(天然ガスがロシアから十分に供給される、鉄鋼と発電が阻害されない)が続くと予測しているのは理解できるが、2024年は果たして。
posted by 藤森信吉 at 20:27| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月16日

モルドヴァ駐NATO代表、中立について語る

 こちらにチボタル・モルドヴァ駐NATO代表(前国防大臣)のインタビュー記事が掲載されているので簡単に紹介。

・6/15-16、ブリュッセルにおいてNATO加盟国の国防大臣会議が行われ、モルドヴァからも国防大臣が参加する予定である。

・「中立について」
 「何年もの間、社会では中立と非武装化は平和をもたらすという理念が推進されてきた。しかし、これは大いなるフェイクであった。打も我々を攻撃の際に守てくれない。今や、我々の政界は目覚め、高暴力の発展の必要性を理解しはじめている。人々に中立は平和を意味しない、と説明しなければならない」
・「NATOとの関係について」
 モルドヴァの対NATO関係見直しは2014年から、すなわちドンバスにおける戦争とクリミア併合を受けてはじまった。「ジョージアも同様にロシアの攻撃を受けて同様の行動をとった」 我々はNATOに助けを求め好意的な対応を得た。2014年のNATOウェールズサミットでDCB(Defence and Related Security Capacity Building Initiative)が採択された。2015年、私が国防相のとき、我々しDCBを実現に移したが、2016年ドドンが大統領に就任すると状況は変わってしまった。彼はNATへの接近を好まなかったからだ。DCBは12プログラムあるが、ウクライナ開戦前には、6つが机上に乗せられており、3つが実際に動いていた。開戦後、モドヴァ・NATO関係は強化され、NATOは即座にモルドヴァに支援を行い、また18の計画で強力関係にある。
・「協力の優先順位について」
 開戦後、モルドヴァにとって、軍事力の近代化、非軍事機構能力(治安警察)の強化が必要であることが理解された。昨年のNATOマドリードサミットにおいて、既存のDCBプログラムに追加されて新たな援助パッケージがモルドヴァに提供された。領空の防衛に関連した計画、また、アンチドローンシステムやレーダー設備も必要だ。また、生物・化学・核兵器の影響を排除する設備も優先課題だ。ザボリジア原発からのリスクが関連している。今年度、NATOは新たな協力形態を導入する、すなわち、ITPP(国別適合パートナーシップ計画)である。目下、IPAP(個別パート. ナーシップ行動計画)がモルドヴァ・NATO間にある。各国が置かれた具体的な状況に基づき、既存のプログラムを統合する単一の新プログラムが必要であるが、まだ未見である。

posted by 藤森信吉 at 15:26| Comment(0) | モルドヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月02日

ゼレンシキー、沿ドニエストル侵攻の選択肢を示唆

 こちらによると、
ゼレンシキー・ウクライナ大統領は、ウクライナ軍の沿ドニエストル軍事侵攻は、モルドヴァ側の要請があった場合に可能である、と述べた。
 キシナウで開かれたヨーロッパ政治共同体サミットに参加したゼレンシキー大統領は、閉会の記者会見において、ウクライナが単独で沿ドニエストルに侵攻するとの噂を否定し「ウクライナはモルドヴァ政権側からの要請があった場合のみ実行に移し、助力する」と述べた。また大統領は、モルドヴァ側からの要請が過去にあったか問われ「要請はなかった」と答えた。また、大統領は、ウクライナは沿ドニエストルに領土要求しない、「(両岸は)モルドヴァと国家統合されねばならない」と強調した。
 ゼレンシキーは、サミットにおいて、ウクライナが戦争で勝利した後にモルドヴァは統合されることを確信している、とも述べていた。
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沿ドニエストルは、かつてウクライナ社会主義ソビエト共和国領であったので領土要求はできなくもないが、否定。
沿ドニエストルへの軍事侵攻は、2022年5月頃にモルドヴァ側に打診したが賛同されなかった、という説があったが、ゼレンシキーの今般の発言は、却ってそれを裏付けることになっている。2022年5月というと「沿ドニエストル側からの侵攻でウクライナを挟撃」と我々は踊っていたが、実際の情勢は「ウクライナ側から侵攻で沿ドニエストルを挟撃」に近かったようだ。
 沿ドニエストルは本当にガクブルだろう。今やロシアは頼りにならない、経済的には天然ガスの供給が怪しくなっている、ウクライナが軍事圧力を示唆。ナゴルノカラバフの次は沿ドニエストルなのか。
posted by 藤森信吉 at 14:41| Comment(0) | 沿ドニエストル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月16日

モルドヴァのCIS議院アンサンブル脱退はCIS脱退を意味するのか

 5月15日にグロス・モルドヴァ議会議長が「CIS議院アンサンブルから離脱する可能性がある。CISからの離脱の第一歩となる」と記者会見で述べたことに関して、こらちに論評があるので紹介。
 2022年3月にサンドゥ大統領が、EU加盟申請を行ったときからCIS離脱の動きは継続している。ポペスク外相は「CIS参加のメリットはない」と述べ、2023年2月にも、CIS枠内の活動を縮小する、と述べていた。CIS関連の条約は330余りあるが、外務省は、数十の条約を破棄すべきもの、とみている。CISテレビ局たる「ミール」テレビ局創設合意を先週破棄している。
 ロシアのウクライナ侵攻以前、モルドヴァのCIS離脱話はなかった。時の首相は2021年10月のインタビューでモルドヴァはCISから離脱する計画はない、と述べていた。グロス自身も2021年末のCIS議院アンサンブルにおいて「CISは貿易・経済関係を深化させる絶好の場である」と演説した。
 グロス外相の離脱宣言に、社会党は「2020-21年に政権に就いた者に、独立期30年を含む数世紀間の我が共和国の歴史的つながりを断つ権利はない」と批判を浴びせた。ロシア下院のCIS問題委員会議長は「今離脱するなら、経済を含む損失を自らと自らの国民に与えることになる。モルドヴァの利する合意は数多くあるが、その逆はない」とコメントしている。
 CIS議院アンサンブルからの離脱は、CIS機構からの離脱を意味しない。CISは1991年12月8日にロシア、ベラルーシ、ウクライナの首脳が「CIS創設合意」に調印して創設された。12月21日に、さらに8共和国が加わり創設宣言に調印された。この中でウクライナとトルクメニスタンを除く国がCIS憲章に調印・批准している。CIS憲章は離脱の手続きを定めており、2008-9年にジョージアが脱退している。CIS議院アンサンブルは1992年3月のアルマトゥイサミットで調印されたもので、後にモルドヴァも加入している。モルドヴァがEU加盟候補国を目指してEU法との一致を進めている中、CIS諸国の法の統一性を目指すCIS議院アンサンブルは不要となる。
 2022年12月、グロス外相は「モルドヴァはCIS加盟によって何一つ得ていない。開戦後、ロシア市場、その他CIS市場は閉じられてしまった。モルドヴァの対外輸出の70%はEUである」と述べていた。また、CISは、CIS諸国との二国間合意に置き換えられるともした。例えば、二国間ビザなし渡航協定があり、CIS脱退とは無関係である。CIS議院アンサンブルからの離脱は象徴的なものである。
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2023年05月05日

ルーマニアはモルドヴァ合同に消極的

 こちらによると、モルドウァとの合同に賛成するルーマニア世論は33%だった。
 社会調査会社Avangardeによる調査、2023年4月26-29日、850人
・モルドヴァ観 ニュートラル57%、肯定的31%、否定的9%
・将来のある時点でのルーマニアがモルドヴァを統合することについて
否定的54%、肯定的33%、回答不能・回答なし13%
・モルドヴァとの合同に関する国民投票
 反対票50%、賛成票31%、態度未定13%、回答なし6%
・モルドヴァのNATO早期加盟について
 早期加盟すべきでない40%、いずれ加盟31%、回答不能・回答なし29%
・モルドヴァのEU早期加盟について
 賛成40%、反対30%
・ロシアがモルドヴァに侵攻した場合 
 ルーマニアは部隊を派遣すべきではない56%
派遣を認めるべき29%
 回答不能・回答なし15%
・サンドゥ・モルドヴァ大統領について
 好印象40%、悪印象21%

 なお、2022年1月のINSCOPリサーチによる調査では
・ルーマニア世論の74.5%がルーマニア・モルドヴァ合同に賛成、70%がモルドヴァのEU加盟に賛成している。

追記)モルドヴァの世論調査によると、ルーマニアとの合同賛成派は3割程度
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2023年02月27日

駐モルドヴァ・ウクライナ大使、沿ドニエストルを語る

 こちらにマルコ・シェフチェンコ駐モルドヴァ・ウクライナ大使のインタビュー記事が掲載されているので、興味深い点をピックアップ。
・ウクライナがモルドヴァに伝えた政権転覆の情報について
 「諜報機関の盗聴によってもたらされた情報だ。個人的には計画書そのものは見ていない。しかしながら、表になった、ということは既に粉砕されたことを意味している。内容だが、第一に具体的な指令はなく、古典的ではないハイブリッドなものだ。ちょうど、ドンバスやクリミアで始めた戦争と同じだ。サンドゥ大統領が述べたように、街頭をデモ隊が埋め尽くし、個々のグループが国家機関を掌握する。これはクリミアの初期、そしてドネツィク、ルハンシクの初期に使われた手法だ。これにモルトヴァ独自の条件が加わる。外部からの部隊はいらない。ロシア部隊は既にモルドヴァ領内にいる。
・沿ドニエストル領内のロシア部隊について
 「ウクライナの諜報機関は完全にロシア部隊の状態を把握している。臨戦の兆しはない。2014年まで、ウクライナは沿ドニエストルを沿ドニエストル和平の要素、もしくはテーマと見做してきた。2014年後、ウクライナは沿ドニエストルをウクライナ安保の脅威要素と見做している」
・ウクライナがロシアに勝利した後の沿ドニエストル問題の解決策について
 「ウクライナは伝統的に、モルドヴァの枠内で、モルドヴァ政府との合意により、沿ドニエストルが任意の特別な地位を得られるとの立場をとっている。自治、連邦、連合、特別な権限を持つ特別地位、あるいはこれらの混合である。重要なことは第一に、モルドヴァの領土保全原則が和平の主たる様式だ。また、モルドヴァが自らの親欧州路線を維持することも我々にとっては重要だ。ウクライナは、キシナウが望むどのような形態の交渉にも関与する用意がある。
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2023年02月14日

「ルーマニアとの統合」は分離主義とどう違うのか

 こちらに、2月2日のモルドヴァ刑法改正(分離主義の刑罰化)に関する議論が紹介されているのでピックアップ。
・モルドヴァは沿ドニエストルという領土の分離紛争を抱えているが、一方で、ルーマニアとの統合という、独立を放棄する考えがモルドヴァ内で広まっている。独立から30年後、分離主義は犯罪化されたが、統合主義は支持を増やし政治的な選択肢の一つとなっている。
 改正刑法が可決された一週間後、社会党・共産党ブロックの議員が、「隣国への編入、対外戦争への参加、存在しない国家語による議会での演説」を刑罰化する改正案を提出した。大統領与党が多数派を占める現議会でこの法案が可決される可能性はないが、分離主義と統合主義の比較についての議論を呼び起こしている。
・理論的に言えば、統合主義は他国に利して国家性を放棄する意欲であり、分離主義同様に、国家にとって危険である。どちらも現行の国境内に存在する国家を否定するものである。政治評論家のチェヌシャ氏は「政府の決定はロシアの脅威、沿ドニエストル側からの侵攻の封じ込め・抑止から来ている。一方でEU、NATO加盟国のルーマニアは脅威とはみなされず、パートナーとされている」と説明する。
・モルドヴァは、刑罰化を用いらず、ガガウス問題を解決している。1994年の「ガガウス自治共和国の法的立場法」では、ガガウスは分離する権限を持っているが、「モルドヴァの独立国家の立場が変更された時」という条件が付いている。
・モルドヴァの独立当初から、ルーマニアとの統合はモルドヴァの法律のあちこちに反映されてきた。モルドヴァ憲法は統合主義に対し曖昧である。一方で、憲法はモルドヴァの独立問題に対する国民投票についても規定している。2012年には、ルーマニアとの統合を掲げる国民自由党が、現状変更が平和的かつ民主主義的手続きに従うこと、民主主義の基本原則に沿うこと、を条件に政党登録されている。「ルーマニアとの統合」支持率は2015年の10-15%から35-40%に上昇している。統合主義の支持は、モルドヴァ住民の多数がルーマニア国籍パスポートを所持していることにも表れている。統合主義を刑罰化した場合、ルーマニア・パスポートを所持する住民の講義を招き、またルーマニアとの関係を損なう可能性がある。ウクライナの戦線が崩壊し、ロシア軍がモルドヴァ国境まで迫ってきた場合、統合はすぐに実現する可能性がある。
・欧州統合と統合主義は、同一方向であると同時に、相互に競争する考えでもある。欧州統合は、統合主義より反対が少なく、長期的に支持が多数を占めてきた。EU加盟は、統合主義と相容れるものとなっている。しかしEU加盟が許されれば、統合主義の魅力はすぐに失せてしまうだろう。EU内で独立国を維持できるからだ。今日、モルドヴァ世論の30-35%が統合主義に賛成しているが、これはモルドヴァ国家の将来に対する幻滅の現れである。EU加盟は統合主義を潰すことになる。
 
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2023年02月08日

モルドヴァで「分離主義犯罪法」可決

 2月2日、モルドヴァ議会は、刑法典を改正し、「分離主義」の項目を追加した。これに対する評論がいくつか出ているので紹介。
・モルドヴァ法や国際条約の条項を犯しモルドヴァ領の分離を目的とする「分離主義活動」は懲役2-6年、分離主義の情報資料を頒布した場合は2-5年が科せられる。また、資金援助も処罰対象となる。
・沿ドニエストルは、分離主義条項を批判している。イグナチェフ・沿ドニエストル外相は「全交渉過程を損なうもの」と批判している。また、沿ドニエストル議員は、両岸関係を92年初に戻すものだ、と指摘している。沿ドニエストルでは、「分離主義条項は住民全てに係るものである」と喧伝されている。
・モルドヴァの閣僚や議員たちは「分離主義条項」は、沿ドニエストルの住民・役人の大多数に適用されるものではない、としている。教育、保健関連の省庁職員にも係らないが、高官は対象となる可能性がある。モルドヴァ安全保障を損なう気持つデータを集めている機関の職員は対象となる。また、沿ドニエストルの違憲体制を支持しているロシア連邦の公人も対象となる。
・モルドヴァ再統合庁は、分離主義条項は交渉の妨げとならない、なぜなら「沿ドニエストルとの交渉はモルドヴァの主権・領土保全に基いて行われているからだ」としている。一方でモルドヴァの政治家からは、交渉過程が困難になる、とみている。政治評論家のツェラヌ氏は「モルドヴァは領土保全の状態であったことは一日たりともない。分離主義を武力で解決しようとしたが、ロシア軍の関与により失敗した。1992年に休戦条約が結ばれ、半ば沿ドニエストル体制を認めることで平和的な解決を目指す基礎を作った。このモデルをウクライナは拒否し、ロシアの侵攻を招いた。『モルドヴァ型降伏』か、『ウクライナ型抵抗』のどちらが紛争解決を成功に導くのか、いずれ明らかになろう」「分離主義条項の肯定的な面は、モルドヴァ側はこれまでの両岸関係のような寛容はもうないことを沿ドニエストル指導部に示すことであろう」と述べている。
posted by 藤森信吉 at 10:42| Comment(0) | モルドヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月28日

ウクライナ中銀の2023年経済予測

 ウクライナ国立銀行が2022年経済の総括と2023年予測を行っているので紹介。
・インフレ
 2022年のCPIは26.6%増であった。インフレ率の沈静化は解放された地域からの食品供給とロシアのエネルギー部門攻撃による需要減退によってもたらされている。公共料金の固定、フリブナ為替レートの固定、ロジスティックの確立もインフレ率を押しとどめている。一方でビジネスおよびインフラの破壊、サプライチェーンの崩壊、ビジネスコストの上昇、インフレ期待による価格上昇圧力も強い。2023年は18.7%を予測している。2024年は10.4%、2025年は6.7%予想を立てている。主たるインフレ要因は、公共料金の市場レベルへの引き上げである。
・GDP
 2022年のGDP成長率はマイナス30.3%であった。Q4はロシアのエネルギー施設攻撃により35%低下した。商業およびサービス部門は停電に迅速に適応したが、農業、工業には影響が出ている。2023年はマイナス0.3%を予測している。今年の収穫はさらに低下すると予測するが、エネルギー部門のさらになる損壊は避けられると考えている。安全保障リスクの低下と貿易港の完全稼働、収穫の増加、生産能力の回復、ロジの改善、内需回復により、2024-25はそれぞれ4.1%、6.4%の成長を見込んでいる。
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2024-25年には戦争は収束、もしくは局地化できる、という見込みのようです。
posted by 藤森信吉 at 17:07| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月27日

沿ドニエストル、2月もモルドヴァに電力を輸出

 こちらによると、2月の沿ドニエストルのモルドヴァ国家地区発電所(MGRES)とモルドヴァ国営Energocom社との契約価格は73ドル/MWhであった。23万MWhを供給する。一方、Energocom社はルーマニアの原発企業Nuclearelectrica社との契約も継続しており、2月に1万6240MWh、450ルーマニア・レウ(約100ドル)/MWhで購入する。ルーマニア側は夜間10MWh、昼間30WMhを供給することになる。
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 2022年12月のモルドヴァ・沿ドニエストル契約は3か月(12、1、2)であった模様。
電力危機(絶対量だけでなく価格も)に陥ったモルドヴァを、仇敵である(はずの)沿ドニエストル電力が救う、という美しい構造。モルドヴァはNATO加盟を示唆する等、反ロ姿勢でイキっているが、ガスプロムが無料で提供する天然ガスで発電されている沿ドニエストル電力に頼っている。
 2022年の流れを箇条書きすると
・ロシアガスプロムがモルドヴァ(+沿ドニエストル)へのガス供給量を減らす
・沿ドニエストルの火力発電量が落ちる&対モルドヴァ輸出量も落ちる
・モルドヴァは不足分をウクライナから輸入
・ウクライナ、ロシアの空爆で電力輸出停止
・ロシアガスプロム、モルドヴァ(+沿ドニエストル)向けガス供給量をさらに減らす
・沿ドニエストル、電力輸出停止
・モルドヴァは不足分をルーマニア(単価は沿ドニエストル産の数倍)から輸入、それでも足りない
・モルドヴァ、国内電気料金の高騰&ブラックアウトで死にそう
・ガスプロムと手打ち、12月から沿ドニエストルの電力輸出再開

 改めて見返すと、ガスプロムはモルドヴァに何をしようとしていたのか、意味不明
posted by 藤森信吉 at 14:05| Comment(0) | モルドヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月25日

汚職・更迭祭り

こちらによると、ティモシェンコ大統領オフィス副長官の更迭と同時に諸州知事が更迭された。利権関係が示唆されている。

 キリル・ティモシェンコが大統領オフィス副長官から更迭された。それに続いて、キーウ州知事、ドニプロペトロフシク州知事、ヘルソン州知事、スゥミ州知事、ザポリジア州知事も買うてされた。州知事(州行政府長)は大統領オフィスの直轄であり、まさにティモシェンコが地域の調整を担当していた。かのキム・ミコライウ州知事もティモシェンコと毎日、協議している。

 このうち、スゥミ州を除く三州の知事の更迭はティモシェンコ関連である。ティモシェンコはGM社が人道目的として提供したシボレータホを私的利用していると10月にBihus.infoが暴露していた。また、これ以外にも、10万ドル相当のポルシェ・タイカン2021年モデルを乗り回している、とRadaテレビ局が報道していた。

 また12月末には、国家対汚職局がドニフロ市の大規模事業に関連した犯罪を捜査した、と スヘームイが報道した。それによると、ドニプロペトロフシク州はロシアの侵攻の損害を受け、23億フリブナという巨額の修繕費を費やしてきたが、これは他の州より大きな額である。そして、大部分を請け負った企業の共同所有者はドニブロペトロフシク州知事と緊密な関係にあった。ティモシェンコは開戦前、大規模事業の提唱者であった。また、ザポリジア州では州行政府による人道援助の横領に対する捜査が行われていた。ティモシェンコは各州への人道援助問題を担当していた。

 大統領オフィス副長官にはアレクセイ・クレバが任命された。彼はエルマク大統領オフィス長官と関係が深く、更迭劇は、エルマクの権限強化をもたらしている。

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タイミングとしてはいつでも首切りできたようだ。欧米の戦車供与と合わせた感があるが、もしや欧米が、汚職対策を条件としたのだろうか? しかし、ウクライナでは汚職はいかなる状況でもなくならない。復興局面では、さらに利権が渦巻くことになりやしないか。関係ないが、当時は美談とされたドニプロ市の道路の即日復旧、今読み直すと味わい深い。

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posted by 藤森信吉 at 21:10| Comment(0) | ウクライナ論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする